29. 夜明け
夜が明ける。一日たりとも休むことなく続いてきた自然の営み。いった
いこの人生の中で何回この素晴らしい光景を目にすることができるので
しょうか。
頭の上で輝いていた星が静かに眠りにつき、天と地が少しずつその境
界線を確かなものにしていく。目の前にある木が、遠い山に溶け込んで
一枚の影絵のように浮かび上がってきました。寒いけれど冬の夜明けは、
他のどんな季節よりも凛とした威厳に満ちた瞬間であると思います。
本物が語りかけてくる時、僕達はその言葉をどうやって聴くのか。そ
れは耳ではなく頭でもなく、自分の中にある目には見えないものに共鳴
させていくのでしょう。それはうまく説明できないけれど、魂が振るえ
る。つまりは勢いを盛んにすることなのでしょうね。
日常の中にどれだけ共鳴できる瞬間があるだろうか。あなたの周りを
ざっと見回してください。抜け殻のようなもの、死んでいるものがどれ
だけありますか。生きているものはどれだけありますか。
今からでも遅くはない。ひとつずつで良いから「生命」を感じられる
ものを身近に置きましょう。出逢える場所を創りましょう。出かけよう。
自分の生命は周りのものと共鳴しているのだから、活き活きとした響
きあいを大切にしたいですね。
生命の確かさを実感するひととき。大きな自然に包まれている安心感。
そこで共に在る仲間とのつながり。それは僕達が生きていく上で、不可
欠な支えになっているのです。だから子供達にもっと自然体験をさせた
い。大人も子供も何を語り、何を聴くのか。そしてどんな行動をするの
か。日々の暮らしの中で少しずつ生命を育てていきましょう。
ピーンと張りつめた空気に自分の吐く熱い息が吸い込まれていく。大地
から白い光が解き放たれていく。振り向けば3000mを越す白き峰々
が徐々に頬を染めて朝の挨拶をしてくれました。夜が明けました。
よっしゃあ、元気が湧いてきたぞお。