37. 森開き | 『野人魂』 TVチャンピオン野人王 大西琢也が綴るメッセージ

37. 森開き



毎朝、起きるとまず初めに窓を開けます。朝の空気というものは本当に
気持ちが良いですね。何かが始まる目に見えない力。実際に窓を開け
ることで、空気と一緒にその力を自分の身体に沁み込ませるのです。
これはかなり元気がでます。一日、気持ちよく過ごせますよ。

だから、どこへ行っても、寒くても、雨が降っていても、できる限り
そうすることにしています。これはあなたが実際にやってみると良く解ると
想います。そこで深呼吸を5回ぐらいしてみればなおさらいいでしょう。

先日、友達から誘われて伊豆大島へ行きました。都心から船で約2時間。
海も山も程よく気持ちよいので年に1~2回訪問します。たいていは
5月のゴールデンウイークなのですが、今年は1月に行って面白いことが
ありました。

窓ではなく「森を開いた」のです。

森を開くってなかなか表現しにくいのですが、人と森がつながるお手伝い
とでも言えばいいでしょうか。家を建てる前の地鎮祭に近い感覚です。
こんな体験は初めてのことで、行ってみるまでは何をどうすればいいのか
解らないままでした。ま、そのまま行ったのですが。

ある秘密の森に到着。薪、蔓、人、塩、水、麻、野菜などなど。
そこで必要なものは、たった1日の流れの中でゆっくりと着実に
集まってきました。僕が持っていったものはいつものナタと発火具だけです。
数人で小さな穴を掘り、薪を集め、焚き火の準備をしました。
山海の幸を捧げるための祭壇も作りました。

やがて午後になり、島の内外から来た20人程で輪になって座りました。
寒くて寒くて、縮こまっている自分の身体そして、そこに居る人を
充分に感じ取り受け止めて、静かに眼をつぶりました。

呼吸を整えてから眼を開け、ゆっくりと火起こし杵(棒)を臼(板)にあてがい、
祈るように手を揉み合わせて回転させていきます。

しばらくして、「すっ」とするような納得のいく火がそこにありました。

輪の東を開け、火を中心にいれると一気に場が変わりました。
もちろん暖かくなったということもありますが、しばらくの間は
辺り一面が真っ白になりました。
身体を清める煙が渦を巻いてそこに居る人を順番に包んでいったのです。

遥か昔に僕達と共にあった何かが戻ってきた。
人と森のつながりを取り戻す瞬間に立ち会っているような、不思議な感覚でした。

帰ってきて、今想うこと。
アタマを少し脇に置いて、ただそこに在るものをあるがままに
直観的に捉えていくと解ることがある。

いつだって必要なものは必要なときに与えてもらっているのですね。

今ここにある日常は常にその先にある未来につながっている。それをどんなものにするのかは
僕達がアンテナをどれだけ磨けるか、そして受け取ったものをどう活かせるか
にかかっているのかもしれません。

またどこかで森を開く時がある気がします。
火を囲み、語り、唄い、踊り、幸を味わい、祈る。
そんな時を一緒に過ごせたらいいですね。

あなたも窓を開けることで心の窓を開いていきましょう。